遅脈は徐脈と違う
速脈は頻脈ではなく、また遅脈は徐脈ではありません。
速脈は、脈の立ち上がりが早い場合を指します。拡張期に下がった動脈圧が一気に上る状態の場合に脈の立ち上がりが早くなります。つまり、拡張期圧と収縮期圧の差が大きい場合です。脈圧が大きい場合とも言い換えることができますね。では、脈圧が大きい場合というのはどのような病態でしょう?例えば大動脈閉鎖不全(AR)や甲状腺機能亢進、高血圧などがそうです。特に高齢者の高血圧の場合は、動脈硬化によって収縮期高血圧を呈する場合も散見されますので、速脈に寄るようになります※。
遅脈は、脈の立ち上がりが遅い場合です。脈圧が小さい場合で、病態としては大動脈弁狭窄や甲状腺機能低下があります。
たくさん触診するといつのまにかその感覚が身についてきます。
※高齢者では、収縮期血圧は高くなりますが拡張期血圧は低くなります。これは「ふいご現象」によって生じます。ふいごという道具は、薪で火をおこすときに空気を吹き込むために使う道具、アコーディオンみたいなやつです。
「動脈=ふいご」というのをイメージしてみましょう。心臓から勢いよく駆出された血液は、血管の柔軟性が保たれている場合、その圧を動脈が拡張して吸収します。拡張した動脈は、心臓の拡張期に元の径に戻ろうとするため、血管内腔に一定の圧がかかります。このため、柔軟な血管では拡張期にも圧が保たれるということです。他方、動脈硬化が進むと血管の柔軟性が悪くなることから、心臓から駆出された血液はスピード良く循環しますので、拡張期の「ふいご現象」はほとんど発生しません。そのため拡張期の血管内腔圧は低くなります。これが、動脈硬化のある血管と血圧の関係です。